家賃滞納のリスク

1 こんなにたくさんある家賃滞納リスク

(1)資金繰りが詰まり、ローンが返済できない!

家賃滞納している間、当然ながら入金がありません。見込んでいた収入の未入金が続くと、ローンの返済に響いてしまいます。計算上黒字経営だと思いきや、資金繰りがうまくいかなくなる危険があるのです。

(2)新規入居者を募集できない!

滞納者が自主的に退去しない限り、家賃滞納が発生してから強制的に明渡を実現するまでには少なくとも6カ月近くかかります。こじれた場合、1年以上争うということもあります。その間、新規の入居者を募集することはできず、空室率が上がり、不動産賃貸経営に大きな影響を及ぼすことになります。

(3)滞納家賃にも税金が発生!

家賃が滞納しても、収入である以上、法人税や所得税は課税されます。滞納家賃を損金にするには、回収できないことを疎明する資料を用意しなければなりません。家賃滞納のまま決算期を迎えると、入金の見込みがなくても税金を支払う事態に陥ってしまいます。

(4)契約書に書いてあっても違法?

契約書に書いてあることも、賃借人に不利なことであれば、消費者契約法により否定されてしまいます。契約書で対策をたてるのは限度があるのです。さらに、賃借人居住安定法という賃借人優位の法制度も検討されており、法制度は貸す側にとって不利な方向に進んでいます。


2 絶対にしてはいけないこと

裁判手続きを経ずに自らの実力で、退去させたり、家賃を回収させたりしてはいけません(自力救済の禁止)。違反すると、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事告訴される危険もありますので、ご注意下さい。一般的な督促と考えて行動していたとしても、相手が恐怖を感じると問題になるおそれもありますので、慎重に対応しましょう。 以下、過去に裁判で責任を追及された事例を紹介します。


(1)「明渡し」で問題となった対応
対応 刑事責任 民事責任
鍵交換 不動産侵奪罪235の2 不法行為責任に基づく損害賠償
物件への立入 住居侵入罪130
承諾なく荷物の搬出・処分 窃盗罪235・器物損害罪261

(2)「取立て」で問題となった対応
対応 刑事責任 民事責任
執拗な督促
(早朝深夜の督促)
脅迫罪222・恐喝罪249 不法行為責任に基づく損害賠償
督促貼り紙 脅迫罪222


3 明渡の対処方法

家賃滞納者に対しては以下のとおり対応する必要があります。


(1)話し合いで合意書を取り付ける
滞納者と話し合って、合意解除する方法です。相手を威圧しないよう慎重に対応する必要があります。明渡しも合意する場合、合意者には、残置物の所有権を放棄する旨等、後々困ることがないように条件を盛り込んでおく必要があります。

(2)法的手続を進める
法律や判例に定める手順に従い、手続きする方法です。まずは督促を行い、契約解除できる条件が整い次第、契約を解除します。そして、契約解除後、明渡訴訟を起こし、勝訴判決をとります。最後に、勝訴判決をもって、強制執行の手続きにおいて執行官主導の元、退去を実行することになります。途中、賃借人の任意で支払・退去した場合には手続き終了になります。

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